2023.04.11

熱量まで伝わることで住民と強い絆が生まれ、新たなまちづくりの仲間が増えた。導入自治体の紫波町に聞く『Fan道』の魅力。

紫波町企画総務部企画課 
須川 翔太さん・伊東 唯さん

  • Fan道

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※Fan道は、2024年1月~アライドアーキテクツに事業継承いたしました。

商品の魅力やサービスへのこだわりを伝えたい”企業”。自分の好きな企業や商品の裏側をもっと知りたい”ファン”。その両者の絆を強くするために開発されたファンベース実践Webサービス『Fan道』は、企業だけでなく自治体にも導入いただいています。

そのひとつが岩手県盛岡市と花巻市の間に位置する人口約3万300人の紫波町。「紫波町が好き」「まちづくりに関わりたい」と思うファンと行政のつながりを強くする場として、2022年9月に紫波町のFan道を公開しました。

今回、Fan道を導入した目的やこれからの展望について、紫波町企画総務部企画課の須川翔太さんと伊東唯さんに話を伺いました。聞き手は、ファンベースカンパニーの森口と田口です。

まちづくりで大切なのは、まちに関わる人たちの「熱量」

FBC森口まずは紫波町のご紹介とファンベースに取り組もうと思われた背景をお聞かせいただけますか?

伊東さん紫波町では平成17年から「協働のまちづくり」を掲げ、行政と市民が信頼関係を築き、個性あふれる町をつくることを目指してきました。その象徴とも言える官民連携の『オガールプロジェクト』によって、町の中央部の様子は一変しました。

紫波町企画総務部企画課 伊東唯さん

伊東さんオガールとは、成長を意味する紫波の方言である「おがる」と、駅を意味するフランス語の「Gare(ガール)」の2つの言葉を組み合わせた造語です。このエリアを出発点に、まちが持続的に成長していくことへの願いが込められています。

現在、紫波中央駅前には、図書館・産直マルシェ・子育て応援センターなどを備えたオガールプラザ、ホテルやバレーボール専用体育館を備えるオガールベース、バーベキューなどを楽しめるオガール広場があります。国の補助金に頼らない地方創生モデルとして全国的に注目を集め、コロナ前には年間約100万人もの人が訪れるようになりました。

須川さんこうした協働のまちづくりを進めるなかで、ファミリー層を中心に移住者が増え、紫波町は人口を維持し続けています。人口が年々減り続ける岩手県においては異例のことで、行政と市民が共に積み重ねてきたまちづくりの成果と言えるのではないでしょうか。

ただ、まちの様子が変わっていく過渡期にあたり、変化に戸惑っている住民の方も少なくないと感じました。特に、都市部にスポットライトが当たれば当たるほど、農村部で暮らす方々の気持ちが離れていってしまうのではないかと危惧していました。

協働のまちづくりにおいて大切なのは、まちに住む人、関わる人の熱量です。紫波町で暮らす人たちの声や感情的な部分ともっと向き合い、一人ひとりの熱量を育み、より良いまちづくりを一緒に進めていきたい。

こうした課題意識を感じるなかで、ファンベースの存在を知り、私たちが目指すまちづくりにフィットする考えだと感じました。幸い、紫波町には「紫波町が好き」 「一緒に何かしたい」と感じてくださる方が増えています。ファンを大切にし、ファンの存在をまちづくりに活かしていきたい。そう思い、ファンベースに力を入れることを決めました。

紫波町企画総務部企画課 須川翔太さん

「まちの情報」ではなく「まちづくり」の経緯や想いを知ってもらえる場所がなかった。

FBC田口2022年9月より紫波町のFan道が公開されました。検定や体験を通じて、紫波町が目指すまちづくりをファンに深く伝える場になっていると感じますが、こうした設計に至った背景を教えていただけますか?

伊東さん企画をはじめた最初の頃は、検定の内容を特産品や観光寄りのものにしていましたが、協働のまちづくりを掲げている紫波町らしいものにしたいと思い、コンテンツを考え直すことにしました。そうした「まちの情報」がまとまっているWEBサイトは既にありますからね。

色々検討するなかで、私たち役場職員の等身大の人柄や私たちが目指している協働のまちづくりについて、深く知っていただくことを一番の目的に決めました。情報を伝えるというより、私たちの「まちづくりへの想い」を届ける場にしたいと思ったんですね。

須川さんというのも、紫波町に関わる人400名以上を対象にファンベース調査とインタビューを行った際、「行政と顔の見える温かい関係性を築いていきたい」という声をファンの方々から多くいただいていたんですね。行政は仲間のような存在と感じてくださっていて、ものすごく励まされました。

私たちの想いを伝えていくと同時に、「紫波町のまちづくりを応援したい」「まちづくりに関わっていきたい」と思ってくださるファンの方々と深くコミュニケーションをとっていく。そうした温かい関係性を築く場として、Fan道を育てていきたいと考えています。

紫波町のFan道で実施している検定プログラム例

まちの未来を一緒につくりたい仲間との出会える

FBC森口Fan道の公開から数ヶ月経ちましたが、現在、どんな方々が参加されていますか?また、参加したファンの方から、どんな声や感想が寄せられていますか?

伊東さん現在は150名以上の参加者がいて、紫波町で暮らしている方が多いですが、なかには遠方から登録されている方もいらっしゃいます。日本全国に紫波町民が存在しているような感覚がして嬉しいですね(笑)。

色々検討するなかで、検定では、空き家や空き店舗などを活用した日詰地区のリノベーションまちづくりや、町内に7つある学校跡地の活用プロジェクトについての検定クイズを用意しましたが、「紫波町に長いこと住んでいたけど、知らない事ばかりでした」といった感想をコメントをよくいただきます。

特に嬉しいのは、Fan道に参加いただいたことで、「紫波をもっと応援したくなった」「自分もまちづくりに関わっていきたい」といったメッセージを参加者の方々からいただくことです。私たちの想いが伝わったと感じられる瞬間です。

Fan道に届いたファンからの声(コメント)

  • トップのぶれない理念、それがオガールに表現され 紫波を牽引してますね。 人の繋がり=価値 とゆうのも新鮮でした。 紫波でよかった!
  • オガールには買い物かイベント参加目的でしか行く事がなかったので、オガールが建てられるまでの苦労や取り組んでいる事など知る機会ができました。
  • ここまで4つの検定を一気にやってきて、より一層紫波町に興味が湧いた上、実際に行ってみたい、参加してみたいと思う場所、取り組みもあって楽しかったです! ありがとうございましたー!
  • まだまだ知らないことが多かった。 町の雰囲気なのか、シニアの方々もバイタリティに富んでいることに驚いた。若い世代と高齢世代、これからも町を良くしていきたいという思いは共通なんだなと感じた。

FBC田口Fan道で検定をクリアした方を対象にファンミーティングを開催しました。当日は紫波町を好きな理由や紫波町をもっと好きになるための施策などを語り合いましたが、開催してみていかがでしたか?

須川さん温かい空気が流れていて、すごくいい時間を過ごせました。紫波町に想いを持ってくれている方ばかりで、それぞれに考えややりたいことがあって、「こういう方々と一緒にまちづくりを進めていけたら素敵だなぁ」と純粋に感じました。

紫波町に住んでいて、「紫波町のことが好き」だと思っていても、そのことを誰かにあえて話すような場は滅多にないですよね。こんな風にまちへの想いを共有できる場は貴重だと思うので、今後もファンミーティングを定期的に開催していきたいです。

「紫波町を好き」という感情は紫波町の財産そのもの

FBC森口ファンとの繋がりがますます深まっていると感じますが、Fan道を軸にしたファンベースの実践を通じて、おふたりが目指していきたい姿を最後に聞かせてもらえますか?

須川さんファンの方々と話をすると、どの分野でまちづくりに関わっていきたいかは、人それぞれであることがわかります。Fan道に集まってくださった方々が、自分らしくまちづくりに参加できるように、様々な企画を実行していきたいと考えています。

例えば、私は商工課で紫波町の酒産業を盛り上げていくプロジェクトを担当しています。実は、紫波町は南部杜氏(なんぶとうじ)発祥の地という歴史を持ち、100年以上続いている酒蔵が4つあるんですね。また、県内屈指のブドウの産地として、町内産ブドウのみを使用したワイナリーがあるほか、同じく町内産リンゴのみを使用したサイダリーもあります。
また、役場に入社する新入社員や地域おこし協力隊の採用にも、まずはFan道でまちづくりへの経緯や想いが共有できるのが良いと感じています。

ファンの方々のなかには、お酒に興味を持っていたり、紫波町の産業を盛り上げていきたいと考えてくださる方々がいます。そうしたファンと紫波町の酒造事業者さんを繋ぎ、紫波町の酒産業をより盛り上げていくような企画を、Fan道を通じて実行していきたいです。

FBC森口とても可能性を感じる企画ですね。紫波町のまちづくりに関わりたいと思うファンが、自分にフィットするプロジェクトと出会える場所に、Fan道がなると素敵だなと感じました。

伊東さんそうですね。他にも、みんなでお花を植えたり、落ち葉を集める企画とか、「これなら気軽に参加できそう」と思えるようなカジュアルな企画もやっていきたいです。そうすることで、色々な人たちにまちづくりに関わっていただける機会を提供できるのではないでしょうか。

紫波町を好きと言ってくださるファンの方々の存在は紫波町の財産そのものです。小さなまちだからこそ、一人ひとりのファンの存在が大切だと改めて感じています。温かい感情が町中で溢れる未来を、紫波町なら叶えられると信じています。たくさんのファンの方々とともに、紫波町の未来をつくっていきたいです。

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インタビューをした人

Profile森口 裕子ファンベースディレクター

プランナーとオフィスのIT担当兼務。広告代理店や化粧品メーカーでデジタルマーケティングやEC運営を経験。ファンベースでは、企業の「お客様に喜んでもらいたい真摯な想い」とファンの「大好きというピュアな感情」が繋がる瞬間に立ち会えることにいつも感動しています。アンティークマーケットでの宝探しが大好き。

Profile田口 彩人ファンベースディレクター

広告代理店で営業・メディアプランナー・ストプラを経て、ファンベースカンパニーに入社。プランニング業務と自社サービス『Fan道』の企画・ビジネス部門を担当。現在は教育移住で長野県在住。地域コミュニティづくり、コミュニティラジオパーソナリティ、空き家活用などの活動を実践中。趣味はサッカーと料理。

※2023年3月時点の情報です

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